数年前からテレビやインターネットでよく見かける糖質制限ダイエット。
スーパーやコンビニにも、糖質制限向けの商品が置いてあり、今やメジャーなダイエット方法の一つとして知られています。
糖質制限の特徴は、ダイエットを始めて短期間で体重が落ちること。そして見た目も大きく変わることです。
ただし短期間で痩せたいからと、気軽に糖質制限を始めるのは危険。糖質制限ダイエットで体重が落ちる理由と、実施するうえでの注意点を理解しておく必要があります。
また糖質は太る栄養素ではなく、体にとって必要不可欠なものであることも、しっかり頭に入れておいてください。
本記事では
- 糖質制限ダイエットで体重が落ちる理由
- 糖質制限ダイエットを行う上での注意点
について解説します。
糖質制限ダイエットとは
糖質制限ダイエットとは、糖質を多く含むご飯やパン、麺類、芋や根菜類の摂取量を減らすダイエット方法のこと。

もともとはダイエットのためではなく、糖尿病患者の治療食として取り入れられていたものです。
ここで混同しやすい炭水化物と糖質の違いについて説明しておくと、炭水化物とは糖質と食物繊維を合わせたもの。
食品の栄養成分表示を見ると、炭水化物だけでなく糖質・食物繊維それぞれの含有量が記載されているものも多くあります。

炭水化物はたんぱく質・脂質とともに三大栄養素と言われ、体の主なエネルギー源。炭水化物とたんぱく質は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcalあります。炭水化物に含まれる食物繊維はほとんどカロリーがないため、炭水化物のカロリーはほとんどが糖質のカロリーです。
糖質制限ダイエットで体重が落ちる理由
糖質制限ダイエットは短期間で体重が落ちることが特徴。その理由はおもに体の水分が抜けるためです。
糖質を摂ると体内でエネルギーとなりますが、余った糖質はグリコーゲンとして筋肉や肝臓に蓄えられます。このときグリコーゲン1gに対して、水分3gがくっついた状態で貯蔵されるのです。

糖質の摂取量を減らすとエネルギー源が不足し、蓄えているグリコーゲンをエネルギーとして消費します。蓄えられたグリコーゲンが減ると、くっついていた水分も一緒に減ることになり、その分体重が減ったり、むくみが取れて見た目もスッキリすることで、短期間で大きく見た目が変わるのです。
糖質制限ダイエットをして短期間で落ちた体重は、すべてが脂肪ではなく、水分量がかなり減ったということです。
『痩せる=体重が減る』と考えるならば、糖質制限ダイエットは短期間で痩せられるダイエット方法といえます。しかし『痩せる=脂肪が減る』と考えると、糖質制限ダイエットは必ずしも良いダイエット方法とは言い切れません。
ダイエットの絶対原則はアンダーカロリー
糖質を摂ると太る、糖質を減らせば痩せる・・・ダイエットはそんなに簡単なものではありません。
ダイエットの絶対原則はアンダーカロリー、つまり摂取カロリーが消費カロリーよりも少ない状態を作ること。

脂肪1㎏=7200kcalなので、1日あたり240kcalのアンダーカロリーを作れば、30日で1㎏の脂肪が減る計算になります。いくら糖質の摂取量を減らしても、アンダーカロリーが作れなければ、脂肪が減ることはないんです。
ただしこれまで糖質を過剰に摂取していた人は、糖質制限ではなく糖質を適正量まで減らすことで摂取カロリーを抑え、アンダーカロリーを作ればダイエット効果が期待できるでしょう。
糖質制限ダイエットを行う上での注意点
まず大前提として、筆者が所属する食欲コントロールダイエット協会では、糖質制限ダイエットはおすすめしていません。
これまで適正量の糖質を摂取していた人が、必要以上に糖質を制限することで、以下のようなリスクが伴います。
- 基礎代謝が下がる
- 血糖値のコントロールができなくなる
- 便秘になる
- リバウンドしやすくなる
このようなリスクがあることを理解しておくことが大切です。
もしも糖質制限ダイエットを行うならば、以下の4点を守ってください。
- 糖質を極端に減らさない
- 脂質の摂取量に気を付ける
- 食物繊維・水分を摂取する
- 長期間行わない
①糖質を極端に減らさない
糖質制限ダイエットを行う上での1つ目の注意点は、糖質を極端に減らさないことです。

糖質は体にとって重要なエネルギー源で、車にとってのガソリンのような役割です。車はガソリンがなくなると走れませんよね。人間の身体も、糖質がなくなると働けなくなってしまうのです。
ただし糖質を制限したからとすぐに動けなくなるのではなく、他のところからエネルギーを補おうとします。
- 筋肉や肝臓に蓄えられたグリコーゲンを利用する
- 脂質をエネルギー源として使う
ただし蓄えられているグリコーゲンにも限りがあり、特に筋肉量の少ない女性ではすぐに枯渇してしまいます。すると筋肉を分解してエネルギーを作り出すので、筋肉量が減り、基礎代謝が低下します。
また糖質を制限することで総摂取カロリーが減ると、体は省エネモードに入るため、基礎代謝を下げて消費カロリーを最小限に抑えます。そのため食事を減らしても痩せなくなり、どんどん痩せにくい体になってしまうことに。
糖質制限ダイエットのやり方は色々な意見がありますが、筆者の考えとしては、1日あたり150g以上は摂取することをおすすめします。ご飯1杯(160g)で糖質50gほどあり、これを1日3回食べると150gになります。
余分に摂りすぎている分を減らす、というイメージで進めると、ムリなく続けることができるでしょう。
②脂質の摂取量に気を付ける
糖質制限ダイエットを行う上での2つ目の注意点は、脂質の摂取量に気を付けることです。

糖質を制限し、体内のエネルギー源を脂質メインに変えるというのが、糖質制限ダイエットの考え方。脂質はしっかり摂りましょう、という意見が多いのはそのためです。
ただし先述したように、糖質は1g=4kcalに対し、脂質は1g=9kcal。脂質を際限なく摂取すると、簡単に摂取カロリー過多になってしまいます。
摂取カロリーが増えると、いくら糖質を減らしてもアンダーカロリーが作れず、結局痩せないという残念な結果になってしまいます。
特に糖質を制限している女性に多いのが、甘い物欲が止まらない、という悩み。

食事では糖質を減らしているのに、甘い物を欲してスイーツばかり食べていては、糖質制限どころか糖質・脂質過多で栄養バランスが崩れることに。
糖質を減らしすぎないとともに、脂質を摂りすぎないことも気を付けましょう。
③食物繊維・水分を摂取する
糖質制限ダイエットを行う上での3つ目の注意点は、食物繊維・水分を摂取することです。

先述したように糖質はグリコーゲンとして、水分とくっついた状態で体に蓄えられています。糖質摂取量が減るとグリコーゲンが使われるので、一緒にくっついていた水分も減り、体内の水分量が減るため、便秘になりやすくなります。
また糖質を多く含む食品は、食物繊維も豊富に含まれているため、糖質摂取量を減らすことで食事からとれる水分量も減ってしまいます。
野菜やきのこ、海藻類に含まれる食物繊維を意識的に増やしたり、こまめに水分をとることで、腸内環境悪化を防ぐことができます。
④長期間行わない
糖質制限ダイエットを行う上での4つ目の注意点は、長期間行わないことです。

糖質制限ダイエットを長期間行うと、血糖値のコントロールがうまくできない体になる可能性があります。
通常、血糖値が上がるとインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を適正値まで下げるよう働きます。糖質は血糖値を上げる唯一の栄養素ですが、糖質を長期間にわたって制限すると、血糖値が上がらない状態が続きます。すると糖質摂取量が増えたときに、インスリンがうまく分泌されなかったり、逆に過剰分泌によって血糖値が下がりすぎるなど、うまくコントロールできなくなることがあります。
それ以外にも、糖質を含む食材が好きな人が、長期間食べるのを我慢することで、反動でドカ食いしてリバウンドしたり、「ごはんを食べるのがこわい」「何を食べたらいいか分からない」など、摂食障害を患う人も少なくありません。
繰り返しになりますが、当協会では糖質制限ダイエットをおすすめしていません。もし行う場合は、リスクを理解したうえで、短期間に限定して行うようにしてください。
まとめ
糖質制限ダイエットは短期間で大幅に痩せる、夢のようなダイエット方法だと思っている人もいますが、そうではないことがわかっていただけたと思います。
安易に糖質制限ダイエットに取り組んだことで
- 疲れやすくなった
- 痩せにくく太りやすくなった
- 糖尿病予備軍になった
- 摂食障害になった
など、長く苦しんでいる方もいるのが現状です。
痩せて健康な心と体を手に入れるためには、特定の栄養素を制限するのではなく、バランスよく食べることが大切です。
健康的にダイエットする方法は、以下の記事も参考にしてください。

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